歴史の主役ではない人たち|『足利の血脈』を読んで思った「何者でもない人生」

作品記録

歴史小説というと、織田信長豊臣秀吉のように歴史を動かした人物が主人公になることが多いです。
読者としても、成功や逆転、壮大なドラマを期待してしまいます。

しかし今回読んだ『足利の血脈』は、そういう物語とは少し違いました。

この本は、室町時代後期から戦国初期にかけての古河公方・足利氏をテーマにした歴史アンソロジーです。
足利尊氏の血を引く家系ですが、戦国の時代の中では大きな力を持てず、歴史の流れに翻弄され続ける存在でもあります。

物語を読みながら感じたのは、「思い通りにいかない人生」でした。


歴史の主役ではない人たち

歴史小説では、どうしても強い武将や勝者が中心になります。

しかし、この物語の主人公である歴代の古河公方は少し違います。

確かに足利の血という権威はあります。
しかし実際の政治や軍事の力は弱く、北条氏など周囲の勢力の思惑に翻弄され続けます。

自分の思い通りに動けることはほとんどありません。

歴史の流れに押し流されながら、ただその中で生きている。
そんな印象の人物でした。

決して圧倒的な敗者ではありません。
最終的に江戸時代まで家系は存続しています。

しかし英雄でもありません。

言ってしまえば、歴史の中ではあまり語られない存在です。

私の中での古河公方の印象は、正直に言えばあまり良いものではありませんでした。
北条早雲から始まる小田原北条氏の歴史を読むと、古河公方家はどこか脇役、あるいは敵役のように描かれることが多いからです。

早雲、氏綱、氏康の物語の中では、
「また古河公方が出てきた」「なかなか退場しないな」
そんな印象を持っていたのも事実です。


それでも血は続いていく

それでも彼らは消えてしまうわけではありません。

戦国という荒れた時代の中で翻弄されながらも、
次の世代へ血をつないでいきます。

歴史の大きな流れの中では、
いてもいなくても変わらない存在なのかもしれません。

でも、そこには確かに人が生きています。

この本を読みながら、そんな当たり前のことを改めて感じました。


自分の人生を考えた

読み終えたあと、ふと自分のことを考えました。

大きな社会の流れから見れば、
自分もいてもいなくても同じ存在なのかもしれません。

会社という組織の中でもそうです。
実際、私は会社を離れています。

逃げるようにしていなくなった、という気持ちもあります。

そう考えると、自分もまた
歴史の中では名も残らない人間です。

でも、もう一つ確かなこともあります。

私は父親です。
子どもたちは私を慕ってくれて、頼りにもしてくれています。

歴史の大きな流れの中では小さな存在でも、
誰かにとっては大きな存在であることもあります。


思い通りにならない人生

この本を読んで、強く感じたことがあります。

人生は思い通りにはいかない。

そして、思い通りにいかないまま終わることも多いのだと思います。

歴史の中でもそうでした。
古河公方は大きな成功をつかむわけでもありません。

それでも彼らは生き続けます。

そして次の世代へつないでいきます。

この本には勇気をもらうような爽快感はありません。
むしろ静かな物語です。

それでも私は、読んでよかったと思いました。


それでも、今を生きていく

今の自分はまだ混乱の中にいます。

これからどうなるのかも分かりません。
達観できているわけでもありません。

それでも一つだけ思うことがあります。

それでも、人は今を生きていくしかない。

先のことは分かりません。
でも、それでも生きていく。
生きていくしかない。

そんなことを静かに考えさせてくれた一冊でした。

読後感|静かに心に残る一冊

正直に言えば、ページをめくる手が止まらないような本ではありませんでした。
むしろ全体としては、どこか暗い印象の残る物語が多かったように思います。

一章ずつ読むのがやっとで、まとめて読み進める気力はありませんでした。
それでも、なぜか続きが気になるのです。

結局、二週間ほどかけて少しずつ読み進め、最後まで読み切りました。

読み終えてみると、胸の中に残ったのは爽快感ではありません。
むしろ、どこか腑に落ちる感覚でした。

歴史の中では名も残らない存在。
思い通りにはいかない人生。
それでも生きて、次へとつないでいく人たち。

その姿に、どこか共感してしまう自分がいました。

派手な物語ではありません。
けれど、だからこそ心に残る。

読んでよかった。
そう思える一冊でした。

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